大腸憩室
大腸憩室とは

大腸憩室(だいちょうけいしつ)とは、大腸の壁の一部が外側に袋状に飛び出した状態を指します。これらの袋状の構造(憩室)は、加齢とともにできやすくなり、日本人では特に高齢者に多くみられる病気です。多くの場合、無症状で発見されることもありますが、炎症や出血を起こすと症状が出て治療が必要になります。
大腸憩室の原因
大腸憩室の発生には、以下のような要因が関係していると考えられています。
- 加齢:年をとるにつれて腸の壁の弾力が失われ、圧力に弱くなります。
- 食物繊維の不足:便のかさが減ることで腸内圧が高まり、憩室ができやすくなります。
- 便秘や排便時のいきみ:腸の中の圧力が高くなり、腸壁の弱い部分が外側に押し出されやすくなります。
- 遺伝的要因:体質的に憩室ができやすい人もいます。
- 喫煙や肥満、運動不足:生活習慣が憩室の形成に関係することもあります。
大腸憩室の症状
大腸憩室そのものはほとんどの場合、無症状です。しかし、合併症が起きると以下のような症状が現れることがあります。
憩室炎(けいしつえん)
憩室に便が詰まり、細菌感染を起こすことで炎症が生じ、以下のような症状が出ます。
- 左下腹部の痛み(日本では右側のこともある)
- 発熱
- 腹部の張り
- 軽い吐き気や下痢
憩室出血
憩室内の血管が破れることで起こり、突然の大量下血(鮮血のような便)として現れることがあります。
- 通常は痛みを伴わない
- 出血量が多い場合は貧血やショック状態になることも
大腸憩室の分類
大腸憩室は、形態や分布、合併症の有無に応じて以下のように分類されます。
形態による分類
- 真性憩室:腸の壁のすべての層が外へ突出したもの(まれ)。
- 仮性憩室:粘膜と粘膜下層だけが筋層を突き抜けてできたもの。ほとんどの大腸憩室はこちらです。
分布による分類(人種差あり)
- 右側結腸憩室(上行結腸・盲腸など):日本人に多く、比較的若年者にも見られます。
- 左側結腸憩室(S状結腸など):欧米人に多く、高齢者に多く見られます。
- 全結腸型:全体に多数の憩室がある状態。
合併症の有無による分類
- 単純性憩室:炎症や出血などの症状がない。
- 合併症性憩室:憩室炎や出血、穿孔(腸に穴が開く)などの症状がある。
大腸憩室の治療方法
大腸憩室の治療は、症状の有無や重症度によって大きく異なります。
無症状の場合(単純性憩室)
- 特別な治療は必要ありません。再発予防のために、食物繊維の多い食事(野菜、果物、全粒穀物など)を摂ることが勧められます。
- 水分を十分に摂り、便通を整えることが重要です。
憩室炎の場合
軽症(発熱や軽い腹痛のみ)
- 絶食や消化の良い食事で腸を休める。
- 抗菌薬の内服や点滴で治療します。
- 通常は数日で改善します。
中等症〜重症(強い腹痛や高熱、腹膜炎症状など)
- 入院して点滴、抗菌薬治療。
- 腹部に膿瘍がある場合はドレナージ(膿を出す処置)を行うことがあります。
- 穿孔や腸閉塞を起こしている場合は外科手術が必要になることもあります。
憩室出血の場合
- 自然止血することが多いため、入院して安静・点滴・経過観察。
- 出血が続く場合は内視鏡的止血(内視鏡で止血処置)を行います。
- まれに動脈塞栓術や手術が必要となることもあります。
まとめ
大腸憩室は、年齢とともに誰にでもできる可能性がある比較的ありふれた病気です。多くは無症状ですが、炎症や出血などの合併症を起こすと重症化することもあるため、便通の管理や食生活の見直しが重要です。定期的な健康診断や内視鏡検査で早期発見・早期対応を心がけることが大切です。